「―――っ、イヤっ…、離してっ……やっ、いやぁっ…!」

抗う腕に伸ばされた掌を、爪を立てながら剥がしにかかる。
この数日で、もう何度この攻防戦をしたか知れない。
攻防戦の度に爪を立てつづけた彼の掌は掻き傷で相当に痛んでいるだろうに。
アレルヤはさして大したことはないといわんばかりに優しい笑みを浮かべると。
腕を掴んだ掌に更に力を込めてきた。

「裸は嫌だって言うから、服を着せてあげたのに。
脱がすのにこれだけ暴れられちゃうんじゃ、もう服は着せてあげられないね」

僅かな嘆息と共に、もう片方の手が手慣れた手つきで喉元を這い、顎を掴む。

「…い、っン……、ぃ…やっ……」

抵抗は、掴まれた腕に増した痛みで押さえこまれ。
顎を捕らえた指先に力が込められ、強引に上を向かされる。
それを振り払おうと伸ばした腕は、けれど、アレルヤの腕を払うことはなく。
触れる唇が流し込んでくる苦みの強い液体が、やがて四肢の自由を奪い去っていく。


「本当は薬なんて使いたくないんだよ?でも、が協力的になってくれないから…」

“仕方ないでしょう?”

アレルヤの甘い囁きが、霞がかっていく意識の中に降り注ぎ。
捕らわれた腕が唯一の支えとなり、がくりと膝から崩れ落ちる躰を。
アレルヤの逞しい、けれど掻き傷で傷んだ腕が、完全に落ちる手前で抱き救う。

「…ぃ、…や…っ…………ぁ…」

逃げることも叶わず。
拒絶することも叶わず。

「愛し合おう、

掻き抱かれた圧迫感をほんの僅かに感じながら。
甘い声で囁いてくるアレルヤの言葉を最後に。
意識はそこで、儚く途切れた。