触れ合う肌の温もりに包まれながら、まどろみの中。
幾度か瞼を瞬かせて、目覚めの朝に甘い幸せというものを知る。

「おはよ、ニール」

開けた瞳に映り込むのは、くるりと巻いた鳶色の髪。
ほんの僅かに顔を上げれば、翡翠色の綺麗な瞳が、優しく細まり。

“おはよう、

甘い声と共に、額にふわりと口付けが落とされる。


絡み合う手、触れ合う肌。

“愛してる”

そう囁かれた夜のことが、僅かに思考の端をよぎり、恥ずかしさに顔を逸らせば。

“どうした?ん?”

なんて、悪戯な笑みを含んだ声を、伸ばした指先で頬に触れながら。
甘く、あまく、耳元で囁いてくる。


あまい、甘い、幸福な時間。














ここに、目の前に。
確かに彼女はいるのに、けれどここに、僕の知ってる彼女はいない。

…」


4年という年月が、彼女を攫って行ってしまった。




“幸せよ、アレルヤ。ねぇ、ニール”

そういって虚空へと視線を漂わせ笑うに。

“そうか、それはよかったな”

と、ティエリアが切なげな表情で相槌を返す。



に会いたいと言った時に、ティエリアが渋い顔をした。
何かがあるのだろうとは思っていた。
4年前の戦いで、僕等は多くのものを失ったから。




、久しぶり。僕が、…わかる、かな?”

宙に視線を投げていたに、ゆっくりと近づきながら声を掛けた。

“アレ、ル…ヤ?…アレルヤ!生きてたのね!”




4年前と、変わらないと思った。
愛くるしいその笑みも、興奮すると周囲を顧みず過剰なまでのスキンシップに及ぶその癖も。

何一つ、変わっていなかったから。



“こら、。アレルヤが苦しがっている、いい加減離れろ”

“もー、ティエリアのケチー”

“ははは、僕は大丈夫だよ、ティエリア”




変わらない温もりに、知らず口元を弛めて笑う。

ギュッ…と首に回された腕が少し苦しかったけど、こんな風にいつかの懐かしい日のような今が在る。
辛く苦しい日々だったけれど、生きていて、再びここに戻ることができて、本当によかったと思う。


失ったものは大きい。
けれど、それでもここにはまだ刹那やティエリア、そしてが居る。


変わらない面影に、ほっと安堵の溜息を洩らした。


“変わらないね”

“そうだな”


あのティエリアとこんな会話のやり取りができることに関しては、大した変化だと思ったけれど。


の笑顔は昔と何一つ変わっていなかったから。

だから、僕は。
が彼の名前を笑顔で紡ぐことが異常な事であることに。
ティエリアが静かに掌をぎゅっときつく握り込むまで、気づくことができなかった。







い君へ




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