「ハレルヤの…、ばっきゃぁろぉおおおおおおおおおお!!!!!!」









「…、トリックオアトリート」

「ヒッ…!」

盛大に叫んでぜぇはぁと息を切らしていたところに、突然気配なくかかった声に、心臓が飛び跳ねる。


「って、なんだよもう、刹那!驚かすなよー。…はービックリした」

驚き飛び上ったそのままにぐるりーんと首を声がした後ろの方へと向ければ。
頭に魔女帽子、肩に真っ黒いマント、手に俺が持っているのと同じ籠を持った刹那が居た。


「お前、逃げきれなかったんだな」

そう言って、ご愁傷様と憐れむように、刹那を頭のてっぺんからつま先まで見る。
見事なまでにハロウィンだ。
さすがだ、スメラギさん率いる女子軍団。


「まぁ、あの人たちに遭ったが最後だな。それだけで済んだだけでも良しとしとけ」

「そうだな。リヒティは女装させるとか言って服をひん剥かれていた。」

「わぁー…それはちょっと見てみたいような、怖すぎるような…」


好奇心が若干疼かないでもないが、万が一にでもスメラギさん達に遭遇してしまったら…。
たぶん、まともなのは目の前の刹那が着てしまっているし。
リヒティが女装になったというのならば、きっともうマシなものは残っていない筈だ。
去年は確か、それ以外に狼男と包帯グルグル巻き男とフランケンシュタインと吸血鬼が居たはずだ。
一番マシな吸血鬼は、現在遭遇していないロックオンが多分着せられてる。
あとどれだけが着せ替え済みになっているかだが、まだ全部が着せ替え済みになっているとは考えにくい。
何せ、あのスメラギ軍団だ。
用心するに越したことはない。


「いや、ここはやっぱり好奇心より我が身だな」

「俺もそう思う。」

言葉数は少ないものの、あまりにもげっそりとした刹那の表情から、絶対に逃げきろうと。
密やかに決意する。
刹那でさえ逃げきれず、抵抗もしきれずにこうなっているのだ。
彼女達のアジトは既に分かっているので。
今日だけはアジトという名のスメラギさんの部屋周辺には近寄らないようにしておこう。
それが賢明だ。うんうん。



「っと、お菓子か悪戯だっけ?」

「ああ。」

ようやく考えも纏まって、そう言えば…と刹那に出合い頭のことを聞き返せば、刹那がこくりと一つ頷く。

だが、生憎こちらも丁度今さっき、お菓子をくれと言い寄って、何も貰えず逃げられたところなのだ。
しかも、自分がやられる側に回るとは思っていなかったので、あげる為のお菓子も用意してない。


「ごめんっ、刹那!俺、お菓子持ってない!」

不本意とはいえ、形だけでもハロウィンな恰好になっているからには、楽しまなくては損だろう。
純粋にあげられるお菓子がないことを詫びると、目の前の刹那がくすりと笑った。

「じゃあ、悪戯でいいな?」


「…え、ええええっ?!せ、せせせせ、刹那?!」

笑ったかと思うと、急激に近づいてくる刹那の顔に、俺は驚き喚くことしかできなかった。


――…」


唇が触れ合う寸前に、刹那が俺の名前を呼んだ。












「じゃあ、俺はイアンにハロウィンを仕掛けてくる。成功したら教える。」

「あ、ああ…」


聞きながら、けれど刹那の言葉は右から左へ抜けていく。

顔が熱い、濡れた唇が熱い。
張り裂けんばかりに鼓動を刻む心臓が苦しい。


「それじゃ、また後で。」

「あ、ああ…」


誰だ、刹那はまだ子供だなんて言った奴!
唇が…、触れて……、ビックリしてたら舌がぬるっと入ってきて………。


「あんなに、巧い…なんて…」


嘘だろぉおおおおおおお!!!!!



Happy Halloween






現在、0勝2敗。


「もうっ、…もう…、刹那と一緒にお風呂入れないじゃないかーーーーーーーーー!!!!」


子供だと思っていた刹那が大人になっていたことにビックリして、籠まで床に落として叫ぶ。