「あーーーっ、アレルヤ!ちょっと動かないでそのまま、そのまま……!!」
廊下の向こう側から一人でやってきたが、そう言って足早に僕の前まで来て立ち止まる。
「…??どうし―――うっ、わ…ッ…っひ…!」
何事か訊ねようとした言葉が、上擦り引き攣った言葉と共に喉の奥へと引き込み、途切れる。
そして、引っ込んだそれとほぼ同時に、僕の頭の中が真っ白になる。
ぺたり…
さわさわ
むぎゅっ
音に例えるならばこうだろうか…。
立ち止まったがおもむろに手を伸ばした先は紛れもなく、の前に立っていた僕の胸板で。
最初、ぺたりと手を胸板に当てただけかと思い、それだけでも内心はとてもびっくりして上がりかけた悲鳴を呑み込むのがやっとだったのに。
あろうことか、はその手を今度は両手にして、僕の胸全体をさわさわと撫で始めた。
これだけでも僕の頭はホワイトアウト寸前だったのに、は僕の胸板をひとしきり撫で終わると。
今度はその当てたままの手で、僕の両胸をぎゅっと揉みこんできた。
至極真面目な顔つきでお構いなしに僕の胸板を好き勝手するに。
僕はそこがクルー達も頻繁に通る通路だというのも忘れ、完全に直立不動で通路の真ん中で硬直してしまった。
運よく眠っていたハレルヤが起きていたなら。
きっと僕のこの慌てふためきまくった挙句に棒立ちするしか術のなくなった状況を、内側で見物しながら大笑いしていただろう。
ハレルヤ、君が運よく眠ってくれていてよかった。
固まったまま、そんなことを考えていた。
数十分後の自分が今ここにいたならば、そんなこと考えてる暇があったら、早くを引き剥がせ!と捲し立てていたかもしれない。
だが、生憎なことに、いかに超兵といえど、そんな芸当までは持ち合わせてはおらず。
僕はが次にとった行動に、生まれて初めてといっても過言ではないほどに情けない悲鳴を心の中であげることとなった。
休憩中の一コマ
セクハラする人、される人 1