Honey syrup
ティエリアと体の関係を持つようになってから、そろそろふた月とちょっと。
未だに心許せないところがあるのか、抱くまでには今でもまだ紆余曲折を余儀なくされているが、それでも、最初の頃の鮪っぷりに比べれば、今はかなりいい反応をするようになってきていると思う。
明日、久しぶりに休暇が重なることもあって、ふとした拍子にティエリアのことを考えると、どうしてもそちらの方向へと思考が持っていかれてしまう。
というのも、かれこれ一週間ほどティエリアと会っていないのだ。
健全な二十歳そこそこの男子としては、これでも結構…いや、かなり我慢した方だと思う。
禁・欲・生・活!
ティエリアを思って一週間、自慰もせずに過ごす。
そうすれば、一週間後の逢瀬では、きっと今以上にティエリアが愛おしくなるだろう。
そう思って、地上の仮住まいの部屋の壁に張り紙をした。
それを同じく一緒に地上に降りていたロックオンが見つけた時、あいつは腹を抱えて心の底から笑っていた。
「…、これっ、これはないだろう、っく…は、あはははははっ」
ふと、その時の光景を思い出し、ムッと頬を膨らます。
あまりにも小馬鹿にし過ぎだ。
思い出しても腹が立つ。
だが、ささやかな仕返しは既に施しておいたので、休日明けにはわかるであろうその仕返しの成果を、今は楽しみにしておこう。
人の恋路を笑い飛ばした罰だ。
「馬鹿め」
遠ざかる地上を横目に、ぼぞりと吐き捨て、目を閉じる。
今はロックオンとの回想に気を荒立てている場合じゃない。
ようやく、長い長い一週間という期間の地上任務を終え、愛しいティエリアの元へと帰れるのだ。
それは、確固たる決意を持ってして挑んだ、禁欲生活の終わりを意味する。
「潤んだ瞳に、熱に火照る白い肌、赤い瞳に映りこむ、俺。ああ…、想像するだけでもクるものがあるな」
なんていやらしいんだ、ティエリア。
乳首をキツく吸い上げる度にうっすら開いた唇から零れる、甘い吐息。
騎乗位の時に、顔を――耳まで真っ赤にしながらも、胸元に手をついて自分で腰を振るい、快楽に悶える様。
そこに持っていくまでの苦労がまだいろいろとあるにしろ、自分で言うのもなんだが、かなり良い具合に開花してきたと思う。
だが、まだ未開拓の部分がたくさんある。
それについて今回、一週間ほど地上に降りてひとつだけ、よかったと思うことがあった。
「ふふっ、悦んでくれるといいなぁ」
あまり多くない私物に、今回ひとつだけ地上で買って加わったもの。
それは、地上の食料品売り場ならどこにでも置いてある、ごく普通のHoney syrup。