※7話派生ネタ・始まりもなければ終わりもなし・ダメージ拡大必須・報われ要素ナシ・鬱々しいだけな一品・自虐描写含み・そして書き途中放置。OK?
































この掌には、何も残らない。

掴んだものは、砂時計の砂のように。
いつの間にか、毀れ落ちて。


「私、何もしないよ?」

「駄目だ、。」

まるで、そこには最初から何もなかったかのように、何一つ、残らずに。


「なら、手足…縛ってもいいから」

「…っ、君にそんなこと、できるわけが――…」

虚しい風が掠めて。


「何もしない、何もしないわ!手足だけじゃダメなのなら、口も目も、閉ざして、隠してしまってもいい…」

「そんなこと…っ、出来るわけがないだろう…っ」

それすらも、掌には残らない。



「だから、出して?ここから、出して、ティエリア」



もしかしたら、いつの日か…なんて。
愚かしい希望など、抱かなければよかった。


「駄目だ。」

「どうして?私、何も悪いことしてないわ。」

私の掌には、何も残らないのだから。


「これ以上、君が壊れていくのを…見たくない」

「何、言ってる…の、ティエリア? 私は何てことないわ。ほら、私、笑えるもの。大丈夫よ?」

何も残らないのならば、もう何も、最初から望まなければいい。


「…それは……嘘、だ。」

「嘘だなんて、酷いなぁ…ティエリアったら。」

この掌に、何かを掴みとろうなどと。
きっと私にはおこがましいことなのだろう。

だって、神様は…


「大丈夫だって、言ってるのに」

こんなにも、私に。


「それ、の…どこが、大丈夫だと言うんだ…っ、!君のその全身の傷は…全部君自身がつけたものだろうっ!?」

無慈悲なのだから。









痛みなんて、感じない。

だって、心が痛すぎて。
痛みのすべてが麻痺してしまったんだもの。


「…ッ、やめないかっ!」

「何を?私何もしてないわ。どうしたの、ティエリア?」

悪いことは何もしてない。
ただ、何も感じない皮膚に。
今の愚かな私を永遠に忘れないように、刻みこんでおこうと思って。

肌に爪を立てているだけ。
それだけよ?


「ふふ…、ほんと、可笑しいよね。全然、痛くないんだ。」

どれだけ爪で掻き毟って、肉が歪に抉れても。
赤い雫が抉った筋から溢れ流れても。


「やめろっ…!それ以上すれば傷が残――…」

「残ってもいいっ!よくわかったの!」

痛くない。
こんな傷じゃ、痛くなんてなれない。


…っ…?」








声が届かない。
その瞳に、私は映らない。

ほんの少し前まで私が立っていた場所に。
今は違う子がいる。


「想いも告げずにいた私が愚かなの!本当は私に誰かを重ねて見てるって、知ってた!知っててそれでいいって思ってた!それでも…いいって…いつか私を見てくれる日がくるって…」


…なんて、私はなんて愚かな夢を見ていたの、ねぇ?

もう…私が立っていた場所に、私は立てない。
立ったとしても…

もう、届かない。
この声も、この想いも。

届かない。
これ以上の痛みなんて――…。
私には、ない。





「愚かでしょう?だから、もう二度と愚かなことなんて考えないように、傷をつけるの。こんなんじゃ生温いけど、ティエリアがここから出してくれないから…」


これ位しか、今はできないから。

そう言って、見せつけるように、また、皮膚を抉る。


「出してくれるだけでいいの。そうしたら、私は―――・・」