彼が優しく彼女に微笑みかけるのを見て。
大人しく、身を引こうと思った。



愛してた、愛されてた。
4年前のあの日までは。

けれど、今は違う。


私は今でも愛してる。
でも、彼は別の愛を見つけた。


「今でも好き」


…だけど。
苦しいだけの愛ならば、捨ててしまえと。
今ならば、狂おしさから生まれたこの痛みも。
零す涙と一緒にいつか、枯れ果ててしまうだろうと。

諦められるだろうと、思って。

惰性の果てとなった関係に終止符を打とうと、別れの言葉を彼に告げた。

「もう、終わりにしよう?」

と。









一体、何が間違っていたのか。
何を間違えてしまったのか。

どうしてこんなことになってしまったのか。
わからないままに。

彼の猛りをこの身に受け入れる。







僅かな照明を残したのみのほの暗い室内で、絡み合う二つの肢体。
ギシギシと二人分の重みに、ベッドが痛ましい悲鳴を上げている。
けれど、そんなことはおかまいなしと言わんばかりに、アレルヤは腰の動きを速めて。

「どう?気持ちイイ、?」

と、口元を歪めて問いかけてくる。

絶え間ない快楽の責め苦。
もう、この状態がどれほど続いているのかさえ、定かには測れない。








終わりにしようと告げた時。

「どうして?今、好きって。えっ…、何?は僕を嫌いになったの?」

と、何故別れなければならないのかわからない、といった風に聞き返してきたアレルヤに。

「そんなっ…、嫌いになんて………」

と、頭を振って答えを返して。
その後に、“でも…”と続けようとした。


けれどそれは、アレルヤの歪んだ笑みに掻き消えた。

「じゃあ、別れる必要なんてどこにも無いよね。」

そして、アレルヤのその後に続いた“でも…”の言葉に。
力一杯に掴まれた手首の痛みに。


「でも…、僕から離れようなんて…冗談でも口にされたら気が悪いよ、

「……痛っ、…やっ……。……アレル…、ヤ………?」

「僕は無しじゃ生きられないよ?だからさ、もそうならないと、ダメだよ、ね…」


私は彼―――アレルヤがわからなくなった。










「明日も早いし、今日のところはそろそろ終わりにしておこうか?僕は大丈夫だけど、は疲れちゃってるよね」

労わる様な甘い声音の優しい台詞。
けれど、この行為に優しさは無い。

「うーん、どれだけヤればいいのかイマイチわからないんだけど…、そろそろ出来ないかなぁ?きっと皆喜んでくれるよ。」

“――そしたらさ、僕から離れたくても離れられなくなるよね”

耳元で囁いたアレルヤが、ゆっくりと体を起こし。

「もうちょいでイくから…いい子にしてて、暴れないでね?…

逃がさない…と、がっしりと腰元を掌で固定して。
抽挿の激しさが、一気に増す。


「……ァ………ぁ…」

散々に啼かされ尽くして嗄れた喉が、速まった律動に。
ほんの僅かに掠れた声を紡ぎだす。

渇きに震えた喉がヒクリと攣るのと同時に。

「…っ、イ…クッ………ぁ、…アッ…」

激しく打ち付けられた部分が、びくりと震え。
アレルヤの欲望の果てが、そのままナカへと流し込まれる。




「……っは、…は……明日も、朝一で診てもらおうね、

歪んだ口元に笑みを浮かべたアレルヤが、下腹部の―――子宮のあたりに掌を置いて。
愛おしそうにそう囁いて、優しくその上を撫であげた。










Prisoner Of Love