夜、眠る前に。

「貴方だけを愛してる、アレルヤ。貴方無しじゃ生きられないわ」

私を腕の中に収めたアレルヤに、そう10回繰り返し囁いて。

「僕もだよ、

そう言ってオヤスミ…、と微笑んでくるアレルヤが。
髪を払い除けた額に唇を這わせたら。

「おやすみなさい、アレルヤ」

と、アレルヤに微笑み返して。
軽い口付けを交わして。

そうして、ようやく眠ることを許される。










Prisoner Of Love









誰も気付いてない。
誰も知らない。


皆が寝静まった後にやってきて。
蹂躙し尽くすように私を抱いて。
皆が起きだす頃にはこの部屋から居なくなっているから。


誰も知らない。
誰も気付かない。



だから。

、明日、一日オフなんだって?」


そう何でもない風に聞いてくるアレルヤのその一言に。
どれだけ深い意味が込められているのかなんて。

誰も気付かない。


「そうなのか?俺も休暇が欲しいぜ、まったくよぉ」

たまたま耳に入った休暇の言葉に反応したライルが、
凭れかかったソファーから顔だけをこちらへと向けてくる。

「そんなこといって…、ライルさん。貴方、先々週連続でオフ貰ってたじゃないですか」

「世の中週休二日だろー?俺絶対働き過ぎだって!」

眉に皺を寄せて、勢いよく頭上に掲げた指で作り上げられたVの字に。
アレルヤがライルが凭れ込んでいるソファーに手をついて。
ライルの顔を覗き込みながら、きょとんとした声音で言葉を返す。

「そうですか?それ言っちゃうと僕なんて戻ってきてから今日までずっと働き通しなんですよ?」

「えっ、お前休暇無し?」

アレルヤの突然の告白に。
素っ頓狂に驚いた声を上げたライルが、がばりと起きあがり。
アレルヤの方へときちんと向き直る。

「いえ、明日僕もお休みなんで。僕の分までよろしくお願いしますね、ロックオン・ストラトス」

そんなライルの行動が可笑しかったのか少しだけくすりと笑いながら答えると。

「なんだよ、こんな時だけコードネームで呼びやがって、ちくしょー。って、揃ってオフか?お前ら」

さも悔しそうにライルが呻きながら、ソファーへと再び身を沈め。
アレルヤと、次に私を見る。

「へぇー、アレルヤとが同じ日に休暇…ねぇ、若いっていいねぇ、ホント。ま、あんま羽目外さねぇようになー」

茶化すように言うライルの視線を難なくかわし。
アレルヤが私を背に庇いながら、人当たりのいい笑みを浮かべて答える。

「善処はしますよ」














これのどこが善処だというのか。
正当な理由があるのだとすれば、誰でもいい、私にその理由を教えてほしい。















「っ………ん…」

ぼやけた視界と、まどろみにある意識から。
自分が眠っていたのだと漸く理解し。

覚醒を促すように、未だ開ききっていない両の瞳を手の甲で擦りながら。
薄暗い部屋の中、時計を見ようと端末に手を伸ばそうとして。
そこが自室ではない見知らぬ部屋であることに漸く気付く。

「…ど、こ……」

ぐるりと寝たまま見渡した部屋は、生活感の全くないモノトーンで整えられた部屋だった。
覚醒していく意識が、ようやく事の重大さを把握して。
飛び跳ねるように上半身を起こした。

「ここ…は……、私、なに………昨日、は…」

起き上がり改めて見渡す部屋に、焦りは増す一方で。
けれど、必死で手繰り寄せる記憶は、何故か断片的で。


ジャラリ…

ここが何処なのかを確認しようとベッドを下りようと僅かに躯を動かしたの耳に。
聞きなれない重たい鎖の音が響く。

「……っ、…な、に…? ……ッ…」

が、ハッとしたように自分の躯に掛けられていた薄いシーツを勢いよく剥ぎ取ると。
そこにはその音の元となる鉄の鎖が、の足に付けられた革の拘束具とベッドの柵とを頑丈に繋いでいた。