朝、目が覚めたら、俺の一人部屋に俺以外の人間が、しかもよく見知っているヤツがいた。
「…俺、ちゃんとロックしたよな?…ていうか、声紋ロックだよな、この部屋。」
部屋の入口のモニターをチラリとみれば、closeの文字が緑色の正常モードで点灯している。
声紋ロックで異常なし。なのになんで…
なんで居る?!なんで居るんだ?!
ティエリア・アーデェエエエエエエエエエ!!!!!
ティエリア・アーデ襲来
「ぁあぁあああぁああ、わけわかんねーーーーーーっ!」
頭を抱えながら叫びつつも、声は最小限に抑える。
なんで?って?
そりゃあ、真横に、そう、俺の隣にティエリアがいるからに他ならない!
何故?!どうして?!
はたから見れば事後です、としか言いようがない状態で寝ているんだ、ティエリア・アーデ!
服はどうしたぁあああああああ!!!!!
「わからん、さっぱりわけわからん!!」
隣を見て、扉のモニターを見て、再び隣ですやすやと眠っているティエリアを見る。
タオルケットに包まれていない肩口が、あ…微妙にちょっと艶めかしい。
「…って、落ち着け自分。目を覚ませ、俺。つーか、いまそんなこと考えてる場合じゃねぇだろ……」
現状は…良くて万死、悪くても万死。
どっちにしろ万死。
どれだけまっとうな言い訳を並べ立てたとしても、この状況で、何もないとしても、あの潔癖ヴェーダ大好きっ子のティエリアが「そうか、わかった」と穏便にいってくれるとは思えないし、思わない。
それこそ、にこやかに俺の抹殺をヴェーダに提言するのがオチだ。
「俺、まだ死にたくねー」
CBはまだ水面下での調整を続けている。
一世一代の世界への武力介入を前に死ぬわけにはいかない。
…が、このままだと確実にティエリア・アーデに殺される。
だって、こいつ…、以前アレルヤ・ハプティズムが隣の席に座っただけでブチ切れて、後のシュミレーションの時にアレルヤ狙い撃ちしてたもん。
何かしら理由があったにしろ、これはなー…俺、マジで死んじゃうって!
宇宙の塵にされちゃうよ!
「とととと、とにかく!状況把握しねーと!こいつ…は、まだ起きそうにはねぇな。つーか、まだ起きるなよぉおおおおお、お願いだから。」
ティエリアが目を覚まして阿鼻叫喚の地獄絵図になる前に、何としても現状打破を。
普段は信仰しない神様とやらに、今こそばかりは祈りを捧げる格好をとる。
そうして、誠心誠意のお祈りを3秒で済ませると、ヘッドライトをわずかに灯して、ベッド脇に置いてあった携帯端末に手を伸ばす。
「誰か何か知ってそうなヤツ…、と」
携帯端末を通信モードにして、通信履歴からターゲットを絞り込む。
何度目かの通信コールの後に繋がった、回線の表示コードはロックオン・ストラトス。
「?」
は端末から流れ出るロックオンの声を確認すると、ポチっと通信相手への音声音量を最大に設定して、心の限りの叫びをあげた。
「ロックオン・ストラトォオオオオオオス!!!!!」
「なっ、なんだ、?!」
「…我が身が可愛かったらぜってぇ途中で切るんじゃねぇぞ」
若干?
否、かなりドス黒いオーラを纏わせながら。