「ここ、俺の部屋な。で、俺はいま自分のベッドの上。ここまではわかるな?」

「あ、ああ…」

通信端末のカメラで部屋の扉を映し、次に俺の顔を映して、にこりと微笑む。
つられて相槌を打つロックオンの口端が若干引き攣っているのは気にしない。
どうせ、俺が通信を強制的に切れないようにしたのに凹んでいるのだろう。

だって、そうでもしないと、絶対次の映像が映った時点で通信切るのが目に見えているのだから。
仕方ないじゃないか。







ロックオン・ストラトスき添え







「じゃあ本題な。」

端末を通じて映し出されていく部屋の様子に、どんどんと硬い表情になっていくロックオンに。
さぁ心の準備をしろ、そんでもってぜってぇ逃げんなよ、と暗黙の脅しを笑顔に包んで通信で送る。

“まぁ、逃げるも何もあったもんじゃないんだけどな、実際。”

笑顔を浮かべながら、これもまた声には出さず心の中だけでぼそりと吐きだす。

どうせこの地上待機もあと数日で終わるのだ。
今逃げられたとしても、逃げたことへの報復は宇宙に上がった時にすればいいだけのこと。
そんでもって、以前に俺の報復という名の超素晴らしい俺流嫌がらせを既に受けているロックオンが同じ過ちを繰り返す筈も無い。
あったりしたら、まぁ、それはそれで俺の楽しみが増え、ロックオンにはいつぞやの悪夢が再来するだけなのだが…。

それでも、現状は逃げないように脅しておきたいと思う。

これで逃げられた俺、本気で死んでしまう!




「ロックオーン、目ぇ…、逸らすなよ?」

にこーっと最上級の笑みでディスプレイ上のロックオンへと微笑みかけて。
念を押して脅しておいて。

カメラに映らないギリギリのところでチラリ…と隣のティエリアを見る。

…よし、まだ熟睡中。
起きるなよぉおおおおおお、絶対起きるなよぉおおおおお!!!!
後生だからっ!



「…ああ…」

もうどうとでもしてくれ…、そんな声が副音声で聞こえてきそうな位に投げやりな、ロックオンの声が端末から響いてくる。




うぉおおおおおおおおおお、行くぞ、俺ぇえええええええ!!!!

そんな心の掛け声と共に。
俺は冷や汗でまくりな手で、握り締めた端末のカメラを隣ですぴすぴと眠るティエリアの方へと向けた。







「これ、なーんだ?…ってか、なんでこいつがここにいんの?!10秒やるから説明しろやロックオン。」

「ティ、…ティエリア!?」

裏返り引き攣った声が通信端末を通して届く。

9、8、7、6…

「5、4、3…」

「わーーーっ、ちょ、まて、10秒って無理無理ムリムリ、ちょー待て、待て待て!」

2、1、…

「…ゼロ。や、待たねぇし待てねぇし?起きたら終わりなんだって!!これ何どういうこと、ねぇ?!起きたら居たんだよ!隣!なんで?!」



カウントダウン終了と共に、モニターにめいっぱい近づいて、隣のティエリアとロックオンとを交合に見ながら、畳み掛けるように言葉を繋ぐ
そんなモニター越しには、必死過ぎて熱くなっているとは反対に、青ざめ既にげっそりとしたロックオンが映し出されていた。

「あ、ちょっと、ロックオン?!聞いてる?俺の話聞いてる?!ロックオンーーーーー?!!!!!」