たとえば、が溢れて止まらない時。




瞳に堪る涙を拭いて、優しく抱き締めてくれた

大丈夫だよ、と震える肩をそっと抱いてくれた

泣くな、と静かに呟いて、泣き止むまでずっと傍で寄り添ってくれた






彼らは、いない。





共に過ごした仲間がいない。
共に泣いて、笑って、怒って     たくさんのことを一緒に味わってきた、仲間が、いない。

その空虚さが唐突に抑えきれなくなって。
人の温もりに触れたくて。

まだ、失ってはいないと、取り戻せるのだと。
思いたいのに、信じたいのに。

それでも、どうしても涙が溢れて、止まらなくて。



「ごめん、こういうのが好きじゃないって、わかってる。でも、今だけ…ほんの少しだけ…」

仲間の温もりを求めて、見つけた背中に縋りついた。




「5分だ、それ以上は見きれない。」

しばらくの沈黙の後に、そう言って、手にしていた作業を止めて、私の我が儘に付き合ってくれる。

「ありが、と…、ティエリア」

優しさに、更に涙が溢れ、零れた。











たとえば、目の前で           
.
大切
な仲間が泣いている時。


彼らならば

どうしたのかと声をかけ、零れる涙をさっと拭い。
泣き止むまで、優しく傍についているだろう。




「5分だ、それ以上は見きれない」

精一杯考えた結果だ。
瞳に、溢れ零れんばかりの涙を浮かべて、「今だけ、…ほんの少しだけ」と、
力なく背にしがみ付いてきたに、どう接してやればいいのか。

ロックオンのように、気の利いた台詞など浮かばない。
アレルヤのように、優しく気遣ってやれるような性分じゃない。
刹那のように、寄り添うこともできない。

そんな風に考えていたら、優しさなど欠片もないような言葉に、なってしまった。
けれど、は「ありがとう」と言う。


ああ、この俺に、今より少しだけ、彼らのような気概があったなら。
そのまま背中で泣かせるようなことには、ならなかったかもしれないのに。


他人と触れ合う機会を自ら遠ざけていた、過去の自分への罰だろうか。


抱き締めてやりたいと、思うのに。
俺にはそれが、できなかった。