白いドレスを身に纏うのは、彼が似合うと言ってくれたから。
囚われの籠の中で、純白の羽を広げるように螺旋の階段でドレスを広げ腰をかけ。
彼の為だけに美しく着飾り身を装い、彼の為だけに…艶やかに啼く。
けれどもう、そのドレスを着ることは無い。
「あと少し、動くなよ?」
そう上から降り注ぐ声とともに、纏め上げた髪の上から、漆黒のヴェールが被せられ。
カチリ…という音とともに連なった漆黒の珠が、首を幾重にも彩っていく。
「似合うぜ、」
被せたばかりのヴェールを捲り、彼―――ライルがうなじすれすれに唇を落とす。
「…だっ、…だめっ……」
鏡越しに絡み合う視線に、悪戯に指先を喉元に絡めたライルが囁く。
「なんで?男が女に服を贈るのは脱がす為だって…、も知ってるだろう?」
大きくあいた漆黒のドレスの胸元から、すらりと細い指が滑り込み。
僅かに張った乳房を掴んで、外へと掴み出す。
「やっ、…いやっ、やめ………っ、ンぅ…」
叫ぶ声は重なる唇に塞がれて。
抗おうとした掌は、もう片方の手で胸の前で一纏めに留められて。
鏡の中に映るのは。
情交の名残が散りばめられた乳房をあられもなくドレスから剥き出しにして。
ライルの口付けに、為す術もなく堕ちていく。
漆黒のドレスを身に纏った、私。
「今だけ、俺を兄さんだと思えばいい。俺が、欲しいだろ?―――…なぁ、?」
彼の声で彼の表情で、残酷な言葉を彼じゃない彼が囁く。
甘い毒。