「ここまでするつもり…は、なかったんだけど…」

ちゃちな拘束具にものの見事に体の自由を奪われている。
年下の元恋人は、それはそれは、今までで一番綺麗で、可愛くて。

その上に、組み敷くように躯を重ねている自分の姿がアレルヤの潤んだ色の違う双眸に映る様は。
思わずゾクリと、甘い痺れを躰の内からもよおさせてしまうほどに、嗜虐心を刺激してきて。
愉悦の笑みで口元が引きあがるのが抑えきれないほどに、愉しいと感じてる。

「暴れられちゃ面倒だし…。…でも、こういうプレイ、嫌いじゃなかったよ、な?なぁ、アレルヤ…?」


愉しいのはきっと、先ほど呷ったアルコールが体を駆け巡っていて、それが脳を冒して思考をハイにしているからだ。
愉悦の赴くままな思考の片隅で、僅かに残った理性でそうぼんやりと考えながら。

逞しいアレルヤの胸板へと艶めかしく指を這わせて、肌を覆う寝着を肩口まで捲りあげる。



「これ…、痛い?それとも気持ちイイ?」

露わになった、胸板に息づく白桃色の蕾を指の腹で摘みあげて、ギリ…と捻じりあげるように捏ねまわし。
くすり…と笑いを言葉にしながら、耳元に悪戯に吐息を被せながら問いかける。

「……――――…ッ……ン、ぅ…」

「…ああ、口塞いじゃってたら喘ぎたくても喘げない、か。これ、取ってほしい?」

問いかけに、くぐもった声を零す麻布を噛んだ唇に。
自分の唇をギリギリまで寄せ。
唇と麻布の境の、ギリギリのところを出した舌先でペロリとなぞりあげる。

最初は軽く、縁だけをなぞり。
次第に、境から唇へ、唇から喉元へと離れ。
アレルヤが敏感に感じるところを重点的に、集中的に。

苦渋に歪むアレルヤの顔を間近に見ながら、責め立てて。


「ここ…ほんと弱いなぁ、お前。さっきまで萎え萎えだったのに、勃ってきてるぜ?」

布越しでもありありとわかるほどに、硬く形を成していくアレルヤの陰茎を。
折り曲げた膝の部分でスリ…と擦りながら。
意地の悪い笑みを浮かべて、今度は言葉でも責めたてる。



そうなるように仕込んだのだ。
自分好みな反応を示す体になる様にと。
決して短くはない時間をかけて、育て上げたのだ。

だから、それは当然といえば当然の反応といえるのだが。


「ほんと、やらしい躰してるよなぁ…。ちょっと擦っただけなのに、もうガチガチだぜ、アレルヤ?」

「……ッ、ぅ…ん……っん、――――ン、ふっ…」


酷く犯して、堕とせるところまで堕としてみたくて。
わざと嗜虐的な言葉を選んで、投げつけてやる。


「声、押し殺すように…なんて…俺、教えてねぇもんなぁ? 喘ぎたいよなぁ、アレルヤ?」

ニィ…と意地悪く引き上げた口の端に、皮肉めいた笑みを浮かべて。
アレルヤの口内に半分ほど押し込んだ麻布の塊に、そっと指を添わせて、問いかける。



「騒がない、って約束できるなら取ってやってもいいけど…、お約束、できるかなぁ?」





闇色の 03