最初はちょっとした悪ふざけだった。
じゃれあっている時にふと脇腹を突いてみたら、それこそほんのちょっと突いただけだったのに、驚くほどにうろたえたアレルヤが面白くて。
そんなアレルヤをもっと長く見ていたくなって、逃げようとするアレルヤを嘘泣きとちょこざいな演技で釣りあげた。




「アレルヤは…、俺のこと……キライなのっ?」

ロックオンなら、「ああ、嫌いだね」と簡単に嘘泣きだと見破って一刀両断にするであろう演技も、優しいアレルヤには有効だ。

「そっ、そんなことないよ、!」

目薬で作られた涙におろおろとうろたえるアレルヤに、ちょっとだけ罪悪感を覚え、

「じゃあ、いいよね!」

と、さっきまでのメソメソした態度は何だったのかというくらい明るい声と共に、うつむいていた顔をあげる。
顔を上げた先には、「しまった…」というような表情を前面に押し出した顔のアレルヤが居た。

アレルヤの一本釣り一丁上がり、だ。





「大好き、アレルヤ!」

そう言ってにっこりと満面の笑みで微笑むと、眉尻を下げて若干の哀愁を漂わせたアレルヤが

「僕もだよ、…。まったく、君には叶わないよ…」

と返してくれた。





そして、こしょばしていてうっかり暴れて逃げたりしないようにする為に、アレルヤの手首をベッドの柱にベルトで固定して。
俺は、ギシッと二人分の重さに軋むベッドに両膝をつくと、ゆっくりとアレルヤの体―――腰の上あたりに馬乗りになった。

…」

「もー、そんなに不安そうな顔するなってー。ちょっとだけだからさ、ね?アレルヤ」

最初は本当に、ちょっとした悪ふざけと遊び心だった。
けれど、アレルヤの躰を拘束し始めたあたりから、遊び心とは別の感情が胸の奥で僅かに燻り始めていた。













「っは、…もっ……苦しっ……ぁ、ははっ……ぁ…」

笑い疲れ、さらにこしょばゆさに堪え疲れたアレルヤが、そう言って、ギブアップだと涙目で訴えてくるのを、同じくはしゃぎ疲れた意識の中、どこか遠くで聞いていた。


眼下には、蒸気した頬と潤んだ瞳で荒く呼吸を繰り返すアレルヤ。

その姿が何かの姿と重なるなと思い、一通り思案して。
それがセックスの時の扇情的なそれと重なるのだと理解して、「ああ、そうか…それだ」と一人うんうんとうわの空な意識で頷く。


、………?」

突然に不可思議な行動をした自分を不審に思ったらしい、アレルヤが不安そうに俺の名を呼ぶ。

「…?」

その声に、ゆっくりと声のする方を見下ろせば、上目づかいな瞳と、おどおどと自分の名を呼ぶアレルヤがいて。
遊び心の中に隠れ燻っていた別の感情が、その姿にゆらりと揺れて、姿を現す。



くすっ…


さっきまでのが悪ふざけなら、これからアレルヤへすることは何になるだろう?度を超えた悪戯?
そんなことを頭の片隅で考えながら、先ほどの遊びで少しだけ捲れ上がったインナーの下の肌へと触れる。

「っ、…えっ?…な、に…」

戸惑うアレルヤの声に、さらにその手を中へと忍ばせて、ぐいっとインナーを捲りあげると、鍛えられた胸にひょこりと飾りついたようなアレルヤの乳首が顔を出した。

「やっ、…冗談っ…」

曝け出され外気に触れた薄紅色の乳首が、アレルヤの台詞と同時に、ぷくりと硬く勃ちあがる。


ああ、この乳首を舌で舐め転がして吸い上げたら、アレルヤはどんな風に喘ぐだろう。
聴きたい、喘がせたい。
乱れる様をこの目で見て、この手で、この純情な青年を汚してしまいたい。

今でさえ、羞恥に耳まで真っ赤に染めているのだ。
触れたらどうなってしまうのか。

想像した、今以上に扇情的なアレルヤの姿に、浅ましい感情が笑みの裏で、酷く偏った熱へと転化する。








「アレルヤ…、イイこと…しようか」


一方的に生まれた熱を、逃げることの叶わない相手に押し付け、発散させようとしている。
そして、それが酷いことだとわかっていても、止めてやる気などさらさら無い。

自分は、悪い大人だ。


言った意味を即座に理解できずに頭にはてなを浮かべるアレルヤに、にっこりと微笑みかけて。
“イイこと”の指す意味を、後ろ手に伸ばした掌で布越しに触れて、暗に示す。

?…やっ、…、…!!」


インナーを肩口まで捲くしあげられ。
また、その一方でジーパンの履き口から中へと入り込んだ手が、柔らかなアレルヤのそれを煽るように下着の上から形をなぞるように撫であげていくという状況に。
半ばパニックに陥って身を捩って暴れだすアレルヤを、押さえつけて、顎に手を添え上を向かせ、ゆっくりと唇を重ね合わせる。

「っン………ぅ、…んぅ…っ…」


「ッ、ふ………」

離れる唇に糸引く唾液を手の甲で拭いとり。
逃げ腰になる腰をがっちりと自分の重みで押さえつけて、揉み扱かれてムクリと形を現したソレを、意識的にぎゅっと握りこむ。



「逃がさないよ、アレルヤ」






捕えられた